《音楽ネタ》「ラベンダー」が歌詞に含まれるJ-POPから、世相を考察してみる。

目次
セナンク修道院のラベンダー畑

昭和から平成、令和まで歌われる「ラベンダー」

皆さま、こんにちは!

今回はネタとしてふと思い付きましたのでJ-POPについて書いてみます。最近、木村拓哉さんことキムタクがNHK「SONGS」に出演されていたのをたまたま見かけまして、その時に披露されていた新曲から「ラベンダー」という言葉が聞こえてきました。

実は、オーディオ好きで昭和歌謡、J-POP大好き人間です。特に60年代後半〜80年代前半は日本歌謡界の最高傑作揃いだと思っています。

そんなわけで、歌詞に「ラベンダー」が登場する曲といえば、松田聖子さんも坂井泉水さんも歌ってたなあ、と思い出しました。歌詞に出てくるラベンダーにはどんな意味を込めているんだろう。。。ちょっと気になったので、まとめてみることにします。

意味わからないくらいマニアックすぎるネタでスミマセン…(笑)

80年代の大ヒットソング!松田聖子「渚のバルコニー」

渚のバルコニーで待ってて
ラベンダーの
夜明けの海が見たいの
そして秘密...

歌が松田聖子、作詞が松本隆、作曲が呉田軽穂こと松任谷由美という昭和を代表するアーティスト勢揃いで作った贅沢な曲。1982年オリコンチャートでも上位にランクインした名曲中の名曲に、「ラベンダー」の歌詞があります。

たぶん、日本で最初の歌詞中に登場する「ラベンダー」だと思います。(’82年以前にラベンダーを歌っている歌詞があれば教えてください!)

少し不思議な歌詞なのですが、なんと、この曲ではサビで「ラベンダー」が登場します。

「ラベンダーの夜明けの海」とは、一体なんなのでしょうか?

松本隆さんは言葉の魔術師とも言われる方で、「瑠璃色の地球」や「赤いスイートピー」、「君は天然色」など色表現を多用する方でもあります。つまり、ここでの「ラベンダー」も夜明けの海に修飾する色表現ではないかと考える事ができます。

朝焼けの色をラベンダー色とするならば、確かに詩的な世界観ですよね。

昭和57年当時のことを考えると、ラベンダーの香りというものがまだまだメジャーでない頃です。昭和59年にようやく北海道・富良野のラベンダーで香水が販売されたそうです。この歌詞にラベンダーという単語を使うあたり、松本隆さんの先見性を感じます。ちなみに、一般的なラベンダーは海辺では咲きにくいと考えられます。

と調べていたら、ベストテンで歌った英語の歌詞を発見しました。最後に一瞬だけ黒柳徹子さんが見えました。

Meet me darling,
on a seaside balcony
I want see the Lavender rays of
morning dawn upon the sea

まさか、英訳で答え合わせができるとは思いませんでした。

英詞では “Lavender rays of morning dawn”となっています。日本語に含まれていなかった”rays”の意味は「光線」、つまり「朝焼けのラベンダー色の光」となります。ちなみに、英訳での目的語が「ラベンダーの光」ということですので、海が見たいわけではなく 「ラベンダー色に輝く朝焼け」が見たいということまで分かりました。

海からのぼってくる太陽の光をラベンダー色と表現するとは、凡人には到達し難い詩の領域に感じました。

坂井泉水の隠れた名曲!ZARD「来年の夏も」

ラベンダーの匂いに 心ときめく
昨日よりもっと 愛しい

ZARDファンとして忘れてはならないのが「来年の夏も」という隠れた名曲。1994年発売、このご時世では考えられないダブルミリオンを獲得したアルバム「OH MY LOVE」に収録されています。

坂井さんのお気に入りだったらしくベストアルバムにも収録されている曲です。

こちらは「匂い」とある通りの意味です。歌を聞くとわかるのですが、ときめいている主人公は「私」つまり女性です。ラベンダーの匂いには、ときめかせる何かがあるのか、それとも男性の香水の匂いなのか。おそらく後者でしょうね。

1994年当時のことはよく知りませんが、ラベンダーの香水はフローラル調で現在でも男女問わず人気です。ゲランパリやディオールのラベンダー入り香水は世界中で大ヒットしました。

バブル後の話ですので、その頃には日本人も香水に馴染みが出てきた頃です。

「来年の夏も」というタイトルにもある通り、ラベンダーは夏の花です。ラベンダーの香水をつける男性が当時いたとすれば、相当お洒落な人だったか、あるいは都会的・国際的な仕事をしていた可能性もあります。色々と想像が膨らみますね。

木村拓哉「サンセットベンチ」

あなたが好きなこのラベンダー色の
スカートを今日も履いていたの
そういって端の方をつかんでなびかせている
ひらり ひらり ひらり

ソロアーティストとして活動を始めた木村拓哉さんがラベンダーを歌っていました。先日、NHK「SONGS」で歌っていたのを見て、まさかのラベンダーに驚きました。作詞はUruさんという女性シンガーソングライターです。私は初めて名前を見たのですが、日曜劇場「テセウスの船」の主題歌を歌われている方だそう。

ここでのラベンダーは、やはり色表現として用いられています。

最近のファッションは、パステルカラー人気ですよね。ファッションだけでなくインスタなどの写真もパステル調が人気なのかなと思います。ラベンダー色はガーリーな雰囲気ですよね。

勝手な想像ですが、ファストファッションとパステルカラー、、、まさしく現代の若者の風景を象徴している歌詞だと感じました。

ちなみに現在、色見本で用いられるラベンダー色は灰色がかった淡い薄紫でした。

詞におけるラベンダーの役割とは。

ラベンダーという言葉を歌詞に入れる場合の役割はなんでしょうか。

色の場合、紫色は古くから高貴な色とされてきましたし、醸し出す神秘性が一つの要因だと考えました。特に、『渚のバルコニー』の夜明けの海にはそれを感じます。香りの場合、それに加えて官能性を思わせます。嗅覚を通して得られる心地よさを、坂井泉水さんは「ときめき」という言葉で表現されています。言い得て妙だと思いました。

また、日本にとってラベンダーは外国の花。これが紫蘇やハッカではどんなに良い曲調でもお洒落には聞こえなかったことでしょう。また、バラの花ではここまでの神秘性を与えなかったことでしょう。あまりに主張が強すぎますからね。そういう意味では、ラベンダーは意外にも主張が強くない優しい花です。

個人的な感想になりますが、やっぱり昭和の歌は面白いですね。あまりリアリズムを追求していないからでしょうか。それだけ夢があった時代なのかもしれません。

松本隆さんは対談で「ウソが98% 本当が2%」で作詞していると答えられておりました。また当時、南フランスやスペインを旅されていたそうですので、もしかするとラベンダーのある風景が脳裏にあったのかもしれません。昭和の歌謡界は作詞家、作曲家という専門職の強みが、歌手によって生かされていた時代だと思います。日本語の美しさ、韻、余白、高度な文化があった時代だと感じます。

ラベンダーという単語一つでも、昭和から令和の時代の歌まで色んな時代背景を考える事ができました。ぜひ、ラベンダーを歌詞に含む歌を知っているという方がいればお教えください!

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