精油を選ぶとき、皆様は何か基準がありますか?
南フランスの真正ラベンダー農園を10年間、日本で展開している僕の視点で、10年間さまざまな精油を購入して気づいたことや、大切にしていることをお伝えしたいと思います。ぜひ最後までご覧頂けますと嬉しいです。
ラベンダーの原産地(発祥の地)を選ぶ、植物の歴史を知る。
現在では、ラベンダーはじめ、ほとんどの植物が世界各地で栽培されているので普段は気にしないことかもしれません。しかし、やはり植物にも得意不得意があるようで、発祥の地というのは、気候や土壌、栽培環境がその植物に最も適していることが多いようです。
例えば、日本のユズ。フランスにもYUZUはありますが、日本のものとは少し違ったYUZUの香りのように感じてしまいます。フランスで栽培されたユズは、「柚子」ではなく「YUZU」なんだと思います。
真正ラベンダーの場合は、やはり南フランスが発祥の地と考えられています。
ラベンダーの中でもアロマテラピーの「癒しの原点」として知られている品種、真正ラベンダーは、南フランスの標高800m以上の高原で栽培されているものとフランス政府によって定められています。
これは200年以上にわたって、南フランスのラベンダー農家たちが自らの品質を保護しようと活動した結果です。現在でも多くの農園が、真正ラベンダーの品質向上に研鑽を重ねています。
余談ではありますが、僕は現在フランスで暮らしています。
たまに日本食が恋しくなることがありまして、先日、とある町のラーメン屋に行ってみました。もちろん日本人が経営しているお店なのですが、やはり日本と同じ味をフランスで再現するのは難しいようです。やはりラーメンも日本で食べるのが一番美味しいようです。
ラベンダー農園で選ぶ、香りの個性を知る
これは、10年前にブルーダルジャン農園と出会った頃に思ったことの一つです。
現在、アロマテラピー業界では香料メーカーや複数の仲介業者を通して、精油ブランドとなり、皆様のお手元にお届けされる精油がほとんどです。一方で、農園では不当な価格での取引を強いられて、持続可能な農業を続けるのが難しいところも多くあると言われています。
香料メーカーによって集められた精油は、様々な農園のものが混ぜられて、成分がおおよそ均一になるように調整されて出荷されるものもあると言います。それを自然なものとするかどうかは個人の判断となりますが、僕の考えとしては、「土地の香り」を知って頂きたい。そういう考えで、現在のブルーダルジャン農園の真正ラベンダーを取り扱っています。
ワイン用語に「テロワール」という言葉があります。
元々はフランス語の「土地 = テール」から派生した言葉ですが、ワイン、コーヒーなどの品種における、生育地の地理、地勢、気候による特徴を指す言葉です。簡単に言うと、生育地の違いで、味わいや香りが変わると言うことになります。
真正ラベンダーという品種においても、同じ生産年の精油であっても、村と村で明らかに香りが違うということが挙げられます。〇〇村は7月下旬の収穫直前に快晴だったけど、□□村は雨が多かったとか。
そのわずかな香りの違いが、ご自身のアロマテラピーあるいはアロマサロンに滋味深さ、奥行きを与えてくれるものだと考えています。ワイン業界では生産者だけでなく生産年、生産方法、添加物の量など様々な情報が公開されています。
より深い癒しや、ストーリー性のある香りを求める方はぜひ農園レベルで個性を感じられると、持続可能なアロマテラピー、しいてはアロマ業界になっていくのではと思います。
以下、翻訳家であり数々のアロマ本で有名な高山先生のブログ記事からの抜粋です。
原文はこちらからご覧頂けます。
ラベンダー油についていうと、天然のものだ、100パーセントピュアだといっても、香料会社系の業者は、いろいろな地域でとれたラベンダーから採油したさまざまな「真正ラベンダー油」を混ぜ合わせることがよくある。これを「調合精油」という。
〈中略〉
はっきり言うが、この調合精油も、アロマテラピー用には利用できない。天然精油の持つ「生命力」を殺し、ただの化学的成分の集団にしてしまっているからである。これでは工業製品と何ら変わりがない。アロマテラピー用の精油は、年々歳々成分が変動する「生きもの」であって、断じて工業製品ではない。高山 林太郎氏
そういった理由から、私たちは2020年より生産年別の真正ラベンダー精油のラインナップを発売しました。単一農園、単一生産年が農産物の基本であると考えているからです。
自分の直感で香りを選ぶ、自分を知る。
周囲の意見に振り回されず、自分の好きな香りを選ぶこと。これは、アロマテラピーにおいてだけでなく、自由なライフスタイルを実現するための最もシンプルな方法のひとつです。
周りの人が使っている香りやアロマブランドが、自分にとって良い香りかどうかは別問題です。特に、アロマ業界にはいわゆるマルチ商法やネットワークビジネスが多数存在していることもあり、なぜか周囲に影響されやすい製品だと感じています。
本来であれば、嗅覚という最も繊細な個人の感覚のひとつが、他の誰かによって支配されてよいはずがありません。ぜひご自身の感覚を磨くためにも、向上心のある方は直感を信じましょう。失敗の上にしか成長はありません。
気になった精油の香りを知り、自分の気に入る香りやブランド観や背景を理解することが、直感を磨く最短コースだと考えています。
余談:本物かどうかの判断基準は「感動」にあり。
余談ですが、「本物」かどうかの判断基準について考えてみたいと思います。
各種辞書、百科事典に載っている「本物」とは大まかに以下の3点。
1. にせものでない、まさしくその物。
2. 見せかけでなく実質を備えていること。
3. 本格的であり、素晴らしい、感動できる物。
例えば、南フランスのマルシェ(朝市)にいくと、偽和(アルコールや合成香料と混ぜること)された出自不明のラベンダー精油があちこちで並んでいます。これは言語に不利な観光客を相手にしたお土産物なのですが、格安でそれっぽいものを販売する業者は原産地においても多く存在しています。
この事例は「1. 偽物」であり「2. 見せかけ」の精油ということになります。
一方で、僕が大切にしたいのは「3. 感動できる」かどうかとういうこと。
ブルーダルジャン農園を毎年訪れると、一面のラベンダー畑とミツバチの羽の音、南フランスの心地よい風と力強い太陽の日差し、そしてどこからともなく漂うラベンダーの香り。それはまるで地球上の楽園だと心の底から感動します。
この感動体験から始まった真正ラベンダー精油を日本の皆様に、その空気のままお届けすることが私たちの使命だと感じています。ぜひ私たちの真正ラベンダーの香りが皆様の感動体験に繋がれば幸いです。