以下、2年前の記事の改訂版になります!
いよいよプロヴァンスにラベンダーの季節がやってきました。Facebookでは南仏の自治体などが毎日のように一面に広がるラベンダー畑の写真を掲載しています。去年は残念ながら行ってないので、私がラベンダー畑に行ったのはもう2年前のことになりますが、ブルーダルジャンの畑の写真はこちらです↓
せっかくブログを始めたので、ここら辺でせっかくなので真正ラベンダー精油の魅力について描いてみようと思います。
ラベンダーの故郷をめぐる、南フランスの旅。
南仏プロヴァンス地方を象徴する風景として、世界的に人気のハーブ。
今や観賞用、園芸用と様々な品種が開発改良されており、私たち日本人の日常でも身近な存在となりました。それでも「ラベンダーの故郷は?」と尋ねれば、「地中海沿岸部あるいは南仏プロヴァンス地方だ」と答えることができ、現地を訪ねれば、それに合点がいく壮大かつ豊かな景色が広がっているのです。
そうして、ラベンダーの原点を追い求めるうちに、やがて辿り着くのが原種、すなわち野生から育つ、昔ながらのラベンダーということになります。南フランスでは最も香り高い原種ラベンダーのことを、尊重と威厳を保つべく「本物の」という言葉で表現します。日本語では「真正ラベンダー」、フランス語では「Lavande Vrai = ラヴァンド・ヴレ」と呼びます。
今回は、この「真正ラベンダー」にスポットライトを当てて、魅力を追求してみようと思います。
真正ラベンダーの品質認証制度「A.O.P.」とは
フランスでは、伝統的な産業を保護するべく政府主体となって、高品質な製品に対して認証を与えるという制度が作られました。ラベンダーにおいても同様で、原種である「真正ラベンダー」に対して、文化的価値とその香りの品質を向上するべく1981年に制度化されました。
ラベンダー精油のAOP認証
AOPとは、日本語で「原産地呼称統制」と呼ばれ、フランス国内で最も品質の良いラベンダーが採取される地域を限定し、品質を保証する制度。厳しい品質基準、香りなどの審査をパスしたラベンダー精油にのみ与えられます。
AOPに認定されるラベンダーの品種は「真正ラベンダー」のみで、標高は600m以上の土地で栽培されたものでなければいけません。真正ラベンダーのうち、様々な品質検査をクリアしたものがAOPとして認証されます。
現在栽培されているラベンダーのうち流通量(精油、花、ブーケの総量)にして1000トン程度が「ラバンジン」という交雑種となっています。真正ラベンダー全体の流通量が90トン程度と言われており、ラベンダー精油の中でAOPに認定されたものはたった20トンほどと言われています。AOP真正ラベンダー精油がプロヴァンスの「青い金」だというのは納得です。実際には、1940年ごろのアルジャン村産の真正ラベンダー精油は、1リットル21万円以上の高値で取引されていたという記録があります。まさに青い金ですね。
また、消費者の視点から考えてみると、生産者のことを知ることができるAOP真正ラベンダー精油はほとんど目にすることがないかもしれません。
ちなみに、全てのハーブの中で「AOP」という制度が適用されているのはラベンダーだけです。ローマ時代から2000年以上もの歴史を持ち、近代香料の原点にもなった植物はまさにハーブ界の王者とも言えます。
孤高の情熱を与える、真正ラベンダーの香り
真正ラベンダーの中でも標高の高い場所で咲くものは希少価値の高いものとして知られています。特に、標高1,200m以上の土地で栽培された真正ラベンダーは最高級と言われ、市場に出回ることもあまり多くありません。弊社で取り扱っているブルーダルジャンは標高1,400mの土地で栽培されておりますが、これも直接販売のみで一般市場には提供していません。(日本では弊社のみの取り扱いとなっています。)
なぜ標高が高いものが品質が優れるかというと、プロヴァンスの気候にあると言われています。プロヴァンスの険しい山々に囲まれた高原では夏になっても寒暖の差が激しく、厳しい自然環境で育つ真正ラベンダーはその芳香を強く持つ傾向にあるようです。
さらに、中世の書物『アラビアンナイト』の一節にあるように、ラベンダーは他の花と混じるのが好きではないようです。
おお、私はなんと幸せなことか。
花壇を飾るあれやこれやの花々の一つでもなく、
卑しい手に摘み取られる気遣いもない。
そして、くだらぬおしゃべりに煩わされる心配もない。
さまざまなほかの植物、私の姉妹たちとは違って、
自然は私を小川から遠く離れた場所で育つようにしてくれた。
私は耕された場所と文明のある土地を好まない。
私は野生のもの、人の世から遥かに離れた
荒野と孤独の中に私はとどまる。
なぜなら、私は群衆に混じるのが嫌いだから。
(・・中略・・)
自由、私は自由!
自由で、何にも靡かない強さを持った情熱の花は、私たちに並ならぬ情熱を与えてくれます。
そのおかげもあってか、22歳で起業し3年目を迎えた今、より一層仕事に人生に情熱を注ぎ続けられています。真正ラベンダーには不安やネガティブな感情を取り払う要素があると言われているのも、そのためでしょう。日々生きることに情熱を持つには最良の香りだと感じます。
感性を研ぎ澄ます香り、真正ラベンダー精油の香り
今までアロマ関係のお仕事をされている多くの方々に、この真正ラベンダーの香りを嗅いでもらってきました。すると、ほとんど全ての方が同じ特徴を言ってくださいます。
これは非常に興味深いと思いました。1,400mの標高で育つブルーダルジャンの真正ラベンダーはアロマの用語では「ケモタイプ」と呼ばれ、その土地特有の成分構造を持っています。そのため、一般的な真正ラベンダーとも少し成分の内容が違います。
ブルーダルジャンのオーナー曰く、痕跡量も含めて600種類もの成分が含まれているそうです。主な芳香成分だけでも10数種類もの成分があるということで、他の植物と比較してもかなり多いのではないでしょうか。そのため、一般的なラベンダーの香りとは違うと思われるはずです。
そのような芳香成分は、鼻からシナプスを通して大脳辺縁系へ到達し、その後大脳皮質の嗅覚野で香りとして認識されます。その時に通る「大脳辺縁系」という場所は、脳の中でも原始的な役割を果たす本能や感情・記憶を喚起させる場所とされています。
そのため、複雑な香りによって大脳辺縁系を刺激することで、眠っていた感情を呼び起こし豊かな想像力が身につくでしょう。私はすでに真正ラベンダーの香りに溢れた日常生活を送っていますが、特に仕事中にはラベンダーの香りを使って集中力を高めています。
記憶を呼び起こす「プルースト効果」とは
余談ですが…
ある香りを嗅ぐことで古い記憶が呼び起こされることを「プルースト効果」と呼びます。これは、フランスの文豪プルーストの著書『失われた時を求めて』の中のエピソードに由来します。紅茶にひたしたマドレーヌの香りで幼少期の出来事を思い出すという、なんともオシャレな話でした。ちなみに『失われた時を求めて』は、400字詰め原稿1万枚(!!)の超長編小説で世界最長の小説としてギネスに認定されているとか…
いくら感性を高めても、飽きっぽい私にはとても読みきれそうにありません…