《ラベンダー畑》南仏プロヴァンス地方で本物のラベンダーを収穫をしてみた!

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南仏プロヴァンス地方の風物詩といえば満開のラベンダー畑。ここ、オート=プロヴァンス地方にあるブルーダルジャン農園のラベンダー畑では標高1,400mと高山にあるということで収穫は一般的なラベンダーよりも遅めです。2018年8月、私はアジア人で初めてブルーダルジャン農園のラベンダー収穫に携わることが出来ました。いや、取材のため、撮影のために1ヶ月間の滞在をしていたのですが、急遽お手伝いをすることになったというのが本当のところでしょうか。

約2ヶ月のフランス・プロヴァンス出張のハイライトでもあるラベンダー収穫。4年前、私が日本初のラベンダー専門店を起業した時、いつか実際に刈り取って、蒸留して自らの手でエッセンシャルオイルを作りたい、と思っていましたが、ようやく実現した日でもあります。

それでは、ご覧ください。

2018年、雨のラベンダー収穫で始まる。

2018年のプロヴァンス地方はとんでもない異常気象に見舞われました。満開のラベンダーが目の前に迫って来ているというのに、毎日の雨。どうやら農園が始まって以来の雨の量だそうで、例年の3ヶ月分の雨が1日で降った日もありました。一日中雨が降っては収穫が出来ません。こんな時は雨が止むまで待つしかない。それも自然相手のことですから。

アロマテラピーの話をしますと、一般的な精油というのは農家さんから農協が買い取って、農協から香料メーカーが買い取る。それを各アロマブランドが買い取る。つまり、何重にも仲介業者がいるのが当然のことです。みなさんがお使いの精油・エッセンシャルオイルには、おそらく農園の名前など載っているはずもなく、良くて地域名、ほとんどが原産国名だけだと思います。

しかし、山一つ隔てただけで、気温・日照時間・土壌などの自然環境は違い、それに影響されて育つ植物の特性も変化します。 アロマ業界では、しばしば精油の成分表を顧客が読むなんてことがあります。しかし、それはあくまで数値的な結果であり、自然環境をほとんど考慮していない故に起きていることです。もちろん、販売者はその香りが持つ化学特性を知ることは大切です。ただし、その数値に囚われるあまり、プロセスである「自然」ということを忘れてはならない、と思うのです。

なぜなら、現地の人々は成分表など全く気にしないのです。自分が好きな香りかどうか、農園・産地を信頼できるかどうか、この2点に尽きるのではないでしょうか。

弊社では(現地のブルーダルジャン農園でも)、基本的に精油の成分分析表(クロマトグラフィー)はお渡ししておりません。それによって変な先入観が頭に入ってしまいますから…もちろん、成分的にもAOPが認定したものですので、一般的に「良い精油の数値」であることは間違いありません。自然ということで少し話が横道に逸れてしまいましたが、エッセンシャルオイルを知る上で農園の環境を知ることも大切なのかなと思うこの頃です。

さて、プロヴァンスといえば石灰質の土壌が主です。雨が降ってしまいますと石灰質の土がぐちゃぐちゃになり田んぼのようになっていまします。少しでも降れば、その日はトラクターが畑には入れなくなります。それくらい普段は夏の間、快晴が続いているものなのです。

ここが違う!収穫後のひと手間。

8月7日、ようやくアルジャン村にも晴れ間がやってきました。流石に、太陽が出てくると本当のプロヴァンス地方の姿が見えてきあます。そう、ここは乾燥地帯。湿度は一気に下がり、地面はあっと言う間に乾いてしまいます。ラベンダーといえば乾燥している大地で育つ植物。日本で育てるのが難しいのも、そう言うわけです。北海道は梅雨がない分育てやすいのですね。

ラベンダー収穫は時間との勝負。蕾から花が咲き、満開になる直前の最もエッセンシャルオイルを含んでいる状態で刈り取らなければいけません。ミツバチや蝶々が飛び交う中を一気にトラクターで刈り取ります。

よく見ると、いや見なくても雑草だらけです。これはやはり無農薬栽培だからなのです。ブルーダルジャン農園では、除草剤や肥料は一切入れずに栽培しています。野草にも負けずに生命力をつける真正ラベンダーの花々はたくましい。力強く、ワイルドなラベンダーの香りが漂ってきます。栽培期間中には3度ほど除草をしますが、なんと羊による除草です。数百頭の羊たちが雑草だけを食べにきてくれます。

プロヴァンス地方で一般的なラベンダー栽培は大きく分けて3種類。ラバンジンと言うクローン種などを大規模に栽培する方法。約9割の農家がこれに該当します。挿し木の方法でラバンジンを栽培する方法は収油率が高く、栽培しやすいことから一気に普及しました。

そして、真正ラベンダーを栽培する小規模な農園。ラベンダーの原産地プロヴァンス地方では2000年に及ぶラベンダー文化を保護しようと、原種である真正ラベンダーを保護・発展させるためにAOPの認証を取り入れました。少しづつではありますが、本物の目を持つ消費者たちに受け入れられて来ています。

最後は、野生ラベンダーを収穫する農園。最も小規模あるいは家族経営の事業です。本当の野生で育つ高品質なラベンダーは最も高価でなかなか手に入りません。野生ラベンダー精油の場合、収穫者や蒸留場所が品質を見極めるのに役立ちます。

ブルーダルジャン農園は2つ目、真正ラベンダーを栽培する小規模農園に当たります。今では数十軒の農家がいるそうですが、自社蒸留所を持ち、ブランドを確立しているのは数軒だけでブルーダルジャンもその一つ。その他は農協や香料メーカーへと買い取られます。

さて、ブルーダルジャン農園が自社ブランドを確立するために、他の農家とは違う方法で収穫しています。それがこちら。

一旦、収穫をした真正ラベンダーの花を野原に思いっきり広げます。そして、ここから手作業で雑草との分別作業が始まります。見るに見かねた観光客のみなさんもお手伝いをしてくれたのでパチリ。だいたい雑草が多すぎます。半分くらいが雑草なのではないでしょうか。

今年は例年にないほど雨が多かったこともあり、雑草が大量発生してしまったそうです。蒸留時の邪魔にならないように、キチンと仕分けを行います。

そして、もう一つ。最も大切なのが天日干しの作業です。ほとんどの農家が今ではやっていないと言う天日干し。まるで日本のお米の「ハザ掛け」のようです。広大な敷地を利用してラベンダーを広げて余分な水分を飛ばします。

こうすることによって真正ラベンダーの凝縮感のある濃厚な香りが生まれてくるのです。香りに対する情熱、そして、古くから守り続けて来た本当のラベンダーの香りを伝えていくことが使命のブルーダルジャンならではの特徴的な風景ではないでしょうか。

標高1,400m!天空のラベンダー畑

プロヴァンスのラベンダーといえば、広大な一面のラベンダーを思い浮かべるでしょう。しかし、本当のラベンダーは山岳地帯の植物。野生のものは崖にへばりつくように育っているもの。今では商業生産が主になってしまったので、真正ラベンダーといえど800m〜1,000mのあたりで栽培している農家さんが多いようです。

ブルーダルジャンの標高1,400mと言うのはラベンダー栽培では最も標高が高い場所の一つと言えます。一般的にラベンダーの香りは、標高が高ければ高いほど良い香り、華やかな香りになると言われています。朝晩の寒暖差がラベンダーの香りをより華やかなものにすると考えられています。ブルーダルジャン農園の8月の朝7時の気温は、なんと6度!日本だと冬の寒さです。朝はセーターを着込んでも寒いくらい。しかし、お昼には30度を超えてきます。半袖にならないと暑くて堪りません。

この厳しい寒暖差がラベンダーの豊かな香りを生み出しているのですね。南フランスの中でも、アルプス山脈の南嶺に位置するオート=プロヴァンス地方の山側は、ニースやカンヌなどのコート・ダジュールの気候とは全く違います。

自社蒸留所で蒸留する精油

ブルーダルジャン農園のあるアルジャン村には、お店がここしかありません。人口8人の村ですから当然かもしれませんが、スーパーや郵便、学校もありません。パンでさえ、車で30分も出かけて買いに行かなければならない村。

村の唯一の施設が、このブルーダルジャン蒸留所兼ショップです。この蒸留所は、オーナーのヴェロニクさんが起業時に建設したものだそうです。畑で刈り取理、天日干ししたラベンダーの花をトラックに積み込んで10分程度で到着します。ブルーダルジャン農園では、1日に3回〜5回ほど畑へラベンダーを取りに行き、多い日で2基の蒸留器を各6回も蒸留します。最大12回の蒸留作業は朝6時から深夜にまでなることもあります。

ここからが長いので、蒸留作業の様子はまた次回。お楽しみに!

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