最高のチーズ屋さんに会いにバスク地方へ。
2018年8月19日、ラベンダー農園での1ヶ月間の滞在を終えて向かったのはバスク地方。古くからスペインとの国境沿いにまたがる独自の文化圏として発展した土地です。その文化を愛する人が多いため「バスク国」とも言われるほど。フランスともスペインとも異なる特徴があり、またバスク語と呼ばれる独自言語がある、まさしく一つの国のような場所です。
そんなバスクへ向かったのは友人に会うため。留学時代に知り合ったバスク出身の友人クリストフ君です。この度フレンチバスクの首都バイヨンヌで、かつてからの念願だった起業をするというのです。
クリストフ君、実はフロマジュリー…つまりチーズ屋さんです。しかし、ただのチーズ屋さんではございません。チーズ屋の中でもとっても優秀で、なんと!!フランス代表の一員でもあります!!2017年の国際フロマジェ大会では世界第2位となり、近い将来にはM.O.F(国家最優秀職人賞)間違いなし!とも期待される方なのです。
ということで、彼のオープン間近となったチーズ屋さんを見学するためにバイヨンヌへやってきたわけです。
バイヨンヌ市内中心部、大聖堂の真横に位置する大通り。こんな素敵な通りに、彼のお店があります!この時にはまた店舗は改装中でしたが、現在は絶賛営業中とのこと。日本でも働いていたことがあるので日本語も少し話せます。バスク旅でバイヨンヌを訪れる方は、彼の厳選するバスクチーズを堪能してください。
店内でもチーズの試食ができるようになったようです。(しかも、ワインもあります!!)
バスク地方特有のカラフルな木組みと窓枠が並ぶ家々は、なんとなくお洒落に見えます。プロヴァンス地方の家は木組みではなく塗り壁がカラフルな家が多く、薄めの黄・赤・クリーム色などのパステルカラーが特徴ですが、バスク地方は水色・赤色・緑色などのハッキリとした色使いが特徴のようです。
それぞれの地域や都市によって街並みや街づくりが違っているのもヨーロッパの面白さ。日本はどこもかしこも似たような街並みなので、なおさら外国の旅情を感じます。こういう古い文化を守り続けるのは大変なこともあるんでしょうけど、それでもやはり大切なことと思います。統一感のある街並みは、市民の一体感や団結感にも繋がるんでしょうか。特にプロヴァンスやバスクは、市民のつながりが強い地域なのかもしれません。中世の頃は統治のためになおさらそういった団結感が重要だったかもしれません。
話は脱線してしまいましたが、いろんな想像をさせてくれる古い町並みはやっぱり魅力的です。
ピエール・オテイザにて、幻のバスク豚キントアを食す。
クリストフ君の新しいチーズショップを見に行ったあと、少しバイヨンヌの街を散策していました。そんな時、たまたま立ち寄ったピエールオテイザ氏の生ハムショップで、なんとピエールオテイザ氏ご本人が農園にいらっしゃるという情報を頂き、せっかくの機会ということでお会いできることになりました。
念の為、、ピエール・オテイザ氏について少し触れますと、絶滅の危機に瀕していた2頭のバスク豚という固有種を3000頭にまで復活させたという生ハム界のレジェンドです。(詳しくはこちら)つまり、世界最高峰の生ハムの生産者のひとりということになります。
アルデュード村というスペインとの国境の町にある農園まではバイヨンヌから車で1時間半程度。着いて早々、ピエールオテイザ氏のご本人のガイド付きで工房見学です。生ハムの作り方というのはそれまで知りませんでしたが、ピエールオテイザ氏の工房ではバスク豚の脚に塩や様々なハーブを塗って、乾燥させて、熟成させる。というのが大まかな作り方のよう。
圧巻の生ハムたち。熟成を経て、このバスク豚の生ハムは世界中のグルマンたちのもとへ送られます。バイヨンヌやボルドーなどの都市ではピエールオテイザの直営店があり、割と簡単に手に入れることができます。直営店ではほぼ全種類のサラミなどを試食することができます。これが、実に美味い。これ以上美味いサラミに出会うことはないかもしれないくらいに美味い。私の音痴な舌を持ってしても、香り、塩味、食感がとてつもなく良いことがわかる。噛んだ瞬間の幸福度はこのフランス出張で一番かもしれない。
そんな見学を終えると、ピエールさんが私たちにランチを振舞ってくれた。今日のゲストはバイヨンヌからの私たちと、パリの高級肉屋の社長さん、そして、もう1組の日本人夫妻。もう一生経験できないかもしれないくらいの大量に並べられたバスク豚の料理の数々。そして、ワインを交わしながらの大宴会が始まった。
どうやら、ものすごい贅沢な空間に居合わせてしまったようだ。
ご縁というのはどこからやってくるか分からない。5年前にフランスへ身一つで留学をした時、右も左も分からず電車の乗り方さえも知らなかった私は、5年間で確かに少しは成長していたようだ。パリのお肉屋さん社長夫妻とピエールさんご夫妻で記念撮影。
アルデュード村のチーズを求めて。
クリストフのチーズ屋さんの準備も兼ねて、ピエールさんの計らいで近くのチーズ生産者の元へ連れて行って頂いた。村から見える山を上がったところにチーズ生産者がいるらしい。ご近所だと言っていたが、どうやら山一つ分くらいはご近所らしい。さすがはフランス。日本の国土の1,7倍は伊達じゃない。
どんだけ雄大な自然…と感動すら覚えるバスクの大自然。プロヴァンスの禿山ばかりの土地とは違って豊かな土壌だということがよくわかる。フランスとひとくちに言えども、気候は全然違う。
放し飼いされている羊たち。アルデュード村では、ピエールオテイザのバスク豚もここの羊も動物たちはみんな放し飼いのようです。土地の広いフランスならではの贅沢な環境です。
どうやらこのチーズはブルビチーズというセミハードタイプの白カビらしい。そう言えば、バスク豚の生ハムも白カビを生やして熟成させるらしい。良質なカビを作ることも美食には欠かせないのだろうか。
日本のチーズ専門誌で掲載されたらしい。ここの農家さんは、La Ferme Feranyoという名前だそうです。
あとがき。
その日は帰宅後にクリストフの家族で晩餐会。もちろんアウトドアである。家の窓から眺める景色が美しすぎるのは本当に羨ましい限りで、奥にはトウモロコシ畑が広がっていた。
なんだかスゴく濃厚な1日を過ごさせて頂いた充実感とともに様々な出会いや発見もあって、やっぱりバスクに寄って良かったと思う。もともとはプロヴァンスでラベンダーの収穫をして帰国する予定でしたから。。。
これもひとえに留学来の友人クリストフのおかげであります。Merci beaucoup!
続く。